登録日/内容/備考
2011.06.05/新規作成/無し
2011.07.18/自由気球の飛行許可申請書及び漁業組合に通知を追記/11.07.15SOMESAT IRC提案
より実際に近い環境で実機の動作を確認する試験項目である。
気球により高度30kmまで上昇させることで、システムが正常に稼動するか
無線通信に不具合が出ないかを確認する。
高度30kmの環境において、機器が正常に動作することを確認する。
1.日本上空の風の特性を理解する
日本上空には偏西風という風が西から東に吹いている。
参考リンク:風のこと
http://contest.thinkquest.jp/tqj2001/40457/met/wind2.html
偏西風は蛇行しており、季節によっても流れ方が変わる。
日本上空では、冬は強く吹き、夏は無風という傾向は、これによるものが大きい。
下記サイトで日本上空の風速、風向のデータが取得できる。
参考リンク:気象庁の過去の気象データ(高層)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/upper/index.php
2008年の館野の月平均の風向と合成風をグラフにしてみると、特徴が良くわかる。
2.法令について理解する
日本においては航空機の運用をメインに考えて法令が作られているので
どのように運用されているかを理解するためにもAIM-Jは購入しておいて損はない。
#AIM-J(Aeronautical Information Manual-Japan)とは、航空機の運航に必要な基本的情報、一般
的な飛行の手順、ATCのプロシージュアを記載しています。また、気象に関する基本的な情報
、航空の安全に影響を与える諸要素の解説、日常の運航に参考となる諸資料および航空管制
に関する用語の解説も含めている。
3.AIS-JAPANで情報を閲覧する
AIS-JAPAN(https://aisjapan.mlit.go.jp/)を利用するとネットで航空に関する情報を得ることが
出来る(Fig.1)。
新規登録の場合はcreate your accountをクリックして指示に従い登録する。
登録したらログインIDとパスワードを入力し、LOGINボタンを押す。
LOGINするとメニュー画面が開く(Fig.2)。
AIPボタンを押すとAIPの選択ページに移る(Fig.3)。
Currentに●印が付いているEffective dataをクリックすると現行のAIP(Aeronautical Information
Package)のページに移る(Fig.4)。
#ここで注意しなければならないのは、日本の国土交通省のサイトなのに英語が標準仕様で
#日本語はオマケだということ。慣れない内は、英語の専門用語を理解するのは大変なので
#手引として最初に日本語で読んでおき、実際の操作はENで行うのが効率的
#(JPでは全機能を使用できない)。
AIP関連のページは、AIP、AMDT、SUPs、AICsの4つのタブで構成されていて
AIPは航空路誌(Fig.4)、AMDTは航空路誌改訂版、SUPsは航空路誌補足版(Fig.5)、AICsは
航空情報サーキュラ(Fig.6)の内容となっている。
この内、メインで使うのはAIPで他はSUPsをたまに見る程度になる。
AIPは
Part1-GEN(GENERAL):総則
Part2-ENR(EN-ROUTE):エンルートのルール
Part3-AD(AERODROMES):飛行場
から成り立っている。
GENは法令関連なのでAIM-Jが手元にある場合は必要に応じて読めば良い。
ENRはENR 2 航空交通業務空域で航空交通管制区を確認、ENR 5で航行上の警告で制限
区域等を確認し、ENR 6でチャートを確認する(Fig.7)。
#チャートはENでしか開けないので注意。またデータサイズが大きいので、クリックして開く
#のではなく右クリックでファイルを保存するのが良い。
AD 2の飛行場で飛行場に関する情報(所在地、標高の情報、空港の図面、IFR着陸の方式、
周辺空域などの空港に関する情報)を確認する(Fig.8)。
メニュー画面(Fig.2)に戻りNOTAMボタンを押すとNOTAMの情報取得ページに移る(Fig.9)。
NOTAMの取得は、Key Selection、Map Selection、Overlayの3通りの取得の方法があるが
Map Selectionが一番簡単に操作できる。
Map Selectionボタンを押すと、広域選択画面になるので任意の地域を選択する(Fig.10)。
任意の空港を選択する(Fig.11)。
Summary Listsが表示される(Fig.12)。
NOTAMの詳細を知りたい場合はNOTAMの番号をクリックする。
4.ラジオゾンデの飛行軌跡を参考にする
日本気象株式会社が気象庁高層気象観測のラジオゾンデ飛行軌跡予測
(http://n-kishou.com/corp/guidance/observation/observation_sonde.html)を公表しているので
参考にする。
5.試験空域を選定する
AISの情報を見ながら、飛ばしても良さそうなポイントを選定する。
#北海道→九州、関東→中部、近畿、中国、四国、東北の順で、北海道は一番空いている。
#中部、近畿、中国、四国、東北は足の踏み場もないと言った所で厳しいが、各地の気象台が
#毎日高層気球を放球するので、気象台の近くは比較的上げ易いと思われる。
選定のポイントは
・放球の際に支障にならない
・飛行軌跡が航空機の往来を妨害しない
・落下地点になるべく民家が少ない
である、国内でこの条件に合致する地形は
・大きな平野部
・東に太平洋が広がっている
・東は海だが、落下後、海流に乗れば岸に着く
である。
#「東は海だが落下後、海流に乗れば岸に着く」の推奨地域は徳島県、和歌山県、
#石川県である。特に石川県は人口も少なく、近くに大きな空港も航路もなく、海流は
#東北の海岸に打ち上がる方向なので、夏の偏西風が弱まる時期が日本で最高の
#条件を満たすポイントとなっている。
6.申請手続きを行う
バルーンサットは自由気球に分類され、申請さえ通れば免許は必要ない。
ただしバルーンサットという名称は知られていないので混乱を避けるために使用せず
航空業界で一般的に用いられているラジオゾンデという名称を用いるのが良い。
申請に関わる機関は以下の通りである。
・国土交通省:自由気球の飛行通報書*1
・海上保安庁:海上作業届(海上作業を行う場合のみ)*2
・総合通信局:無線局申請(無線を使用する場合のみ)
・各行政機関:放球点使用申請、無線地上局使用申請
必ず必要なのは、自由気球の飛行通報書である。地域によって状況がことなるので
申請前に関係省庁に相談して、どの機関(自衛隊や米軍)に連絡すべきか聞くのが
一番の近道である。
(よくわからない場合は、東京航空局保安部運用課03-5275-9292(内線7518
~7520) あるいは大阪航空局保安部運用課06-6949-6211(内線5218~52
20)に相談するのが良い)
*1
空港等の特殊な空域から半径9km内を飛行する場合には自由気球の飛行許可申請書
を作成する必要がある
*2
沿岸付近の海上に落下する場合は、最寄の漁業組合に連絡しておくと良い
調整が済んだら、書類を作成し申請を行う。
(飛行通報書の提出は1ヶ月前、飛行の通報は前日までに実施する)
飛行通報書のサンプルを以下に示す。
7.バルーンサットの準備を行う
バルーンサットを構成する主な部品は
・バルーン
・ヘリウムガス
・パラシュート
・断熱材(筐体)
・各部品を繋ぐワイヤ
・無線機
である。
・バルーン
国内で調達する場合は下記の企業が参考になる。
株式会社気球製作所
http://www.weatherballoon.co.jp/index.html
TOTEX
http://www.totex.jp/index.html
海外で調達する場合はいくらでも見つかるが、下記の企業が参考になる。
Project Aether
http://www.projectaether.org/products.html
kaymout
600gのバルーンで1kgの重量物を吊るした場合、約90分で高度30kmに到達する。
バルーンで注意する点は、ゴム気球の材質には天然ゴムを使用したものと、クロロプレン
ゴムラテックス等の合成ゴムを使用したものがあり、合成ゴムの場合はそのまま使用できるが
天然ゴムの場合は、上空の冷気に耐えられない為、灯油浸けを行う必要があることである。
・ヘリウムガス
ガス販売業者か風船販売業者から購入することができる。
ボンベをレンタルしガスを買う方法が一般的である。
浮力は重量の3倍程度あれば良い。
(1kgの重量であれば3,000リットルが目安となる)
・パラシュート
ラジオゾンデを販売している店で買うのが一番簡単である。
その他の入手方法としては、モデルロケットの販売店で購入する方法がある。
自作する場合は、生地はリップストップを使うのが一般的だが、国内で生地を
入手するのは大変なので下記のような海外サイトから取り寄せることになる。
Hang-em High Fabrics
http://ecom.citystar.com/hang-em-high/index.htm
KiteBuilder
http://www.kitebuilder.com/catalog/
参考情報として、気象台が上げているラジオゾンデのヴァイサラ社のRS92-AGP
http://www.vaisala.co.jp/weather/products/rs92ozone.html
を使用したものは、直径約80cmのパラシュートを使用している。
(RS92-AGP(約300g)+バルーン(約600g)+その他(約100g)=約1kg)
安全な落下速度は3.5~4.5m/sと言われているが、慣性抵抗のみを考慮した単純計算
では、2.0~3.0[m/s]が望ましいようである。
ここで慣性抵抗は下式で表される。
Vf:落下速度[m/s]、m:質量[kg]、g:重力加速度[m/s^2]、S:断面積[m^2]、ρ:密度[kg/m^3]
(断面積をπa^2[m^2]、空気の密度を1.3[kg/m^3]とする)
2.0[m/s]に調整した場合の計算例)
・質量0.1[kg]→パラシュート直径0.48[m]
・質量0.2[kg]→パラシュート直径0.69[m]
・質量0.3[kg]→パラシュート直径0.85[m]
・質量0.5[kg]→パラシュート直径1.10[m]
・質量1.0[kg]→パラシュート直径1.55[m]
・断熱材(筐体)
断熱材(筐体)はホームセンタで売っている発泡スチロール製のクーラーボックスが
最適である。 低温環境に不安があるようであれば、ホッカイロを内部に入れて置くと良い。
・各部品を繋ぐワイヤ
釣り糸を利用すると良い。
搭載物の重量が数百gであれば、5号以上の釣り糸で十分である(ただし吊り下げ方式で
糸に掛かる応力は変わってくるので注意すること)。
・無線機
アマチュア無線機、携帯電話等が挙げられる。
回収の為に無線機を搭載するのであれば、携帯電話で落下地点を確認するので十分である
(携帯電話の電波が届かない時点で回収は殆ど不可能であるため)。
・試験台数:1台
・無線通信が行えること(上空で通信する場合)
・機器が正常に動作すること
・試験としての難易度は低いが、関係各位との折衝に労力を要するので、日本国内で実施
するのは面倒である。
・人工衛星の試験と考えた場合、若干環境が違うのであまり意味のない試験であるが
フィールドで実際の状況をイメージして運用してみるというのが重要である。
机上の検討(実験室の中の世界)のみだと、どうしてもカバーし切れない事象がフィールドで
発生するのは日常茶飯事だからである。